冬休み

お使いを頼まれた12月の朝に、いつもの通りの路地裏から
声がする。小さな声であたしを呼んでいる気がする。
「誰?」
あたしは路地裏を恐る恐る覗き込む。


毛のフサフサした。それはきっと冬毛だ。
「にゃぉん…」
じっとこちらを向いた瞳は、何かを見据えて放さない。
それはきっとあたしだ、と思う。そう、きっと。


「ね、ねこちゃん?」
こんな寒空に、じっとしていて、それでも路地裏は少し風が
穏やかだった。
小さな前足がスッとこちらに向かって動き出した。
「にゃ…」
そうしてあたしの足元へと歩み寄って来ては、スリスリと足を
くすぐる様にして甘えてくる。


あたし、可愛い物が好き。
フワフアとした物とか、コロコロとしたものとか…
特にねこが好きだ。


でも…


お母さんは言う「拾ってきちゃダメだからね」


あたしは思う「だって、かわいそうだもん」


本当の事を言うと、あたしのお家ではペットは飼えない。
だからこうして、外でねこと出会うと、どうしようもなく思う。


「こんなに可愛いのに、な」
あたしはねこを抱き上げて、そっと頬を寄せる。
埃の匂いとか、日向の匂いが少しした。
「にゃぉ?」
ねこは不思議そうに首をかしげる


ちょっと悲しくなって来ちゃった。


ねこは不思議と、あたしの手をペロペロと舐めてきた。
もしかして、あたしの事、慰めてくれているの?
ありがとうね、ねこちゃん…


それから少しして、あたしはねこちゃんと別れた。
「バイバイ、また会おうねっ」
その帰り道、あのお姉さんと出会ったんだ。


「あら?聖ちゃん…?」
「あっ!ベルダンディーお姉さんっ」
「お買い物かしら?」
「うん!お母さんに頼まれて」
「えらいわねぇ」
「ううん、これくらいは、しなきゃ!って」
お姉さんは、良い子ねぇ、と言って、あたしの頭を撫でてくれた。
その時、さっきのねこちゃんと会って感じた感覚が甦って来た。


でも、悲しいとは逆で、何だかとても嬉しく感じたんだよ。


もしかしたら、さっきのねこちゃんもこんな感じだったのかな?
そう思うと、お姉さんに
「ありがとう!ベルダンディーお姉さんっ!」
素直に言えた。何でか知らないけど。


もうすぐクリスマス。
路地裏のねこちゃん達にもきっと、ステキなプレゼントが
ありますように、と神さまにお祈りした。


聖ちゃんの冬休み。


by belldan Goddess Life.


*** *** ***


冬風が冷たくて…マジで寒いですねぇ。