男の戦い(戦闘開始編)

男…いや、漢には避けては通れぬ時がある。
漢の行く道は、まさに坂道のようだ。
気を抜けば、まっ逆さまに転落するしかないのである。


「あ、お客さまっかしら?」
螢一に給仕しながら、玄関先に心を配るベルダンディー
「ちょっと私…見て来ますね」
と腰を上げるのだった。


「待って。俺が行くよ。多分…先輩達だろうから」
それを制して、螢一はスッと立ち上がった。
その姿…まさに戦士のようだった。と言うのは、単に軍用コートを
羽織っている事に由来するのだが。


「はいっ、がんばってくださいねっ」
それは女神さまっの慈愛あふれる笑顔と共に、螢一へと向けられ
戦場へ赴く戦士へのエールそのもの、であった。


「行ってきます」
グッと顎を引き締めて、螢一は応じた。


百戦錬磨の強者(つわもの)である、元自動車部の先輩方…
俺もまた、元自動車部の部長として、ここで負ける訳には…
拳を握りしめ、気合を入れて玄関先まで向かった螢一の目に
先輩達のその姿は、とても尋常ではなかった。


「いらっしゃい、先輩…って、ええー!!」


先輩であり、部長も務めていた田宮は、この冬空の下なのに
ランニング姿であった。そして、彼の盟友である大滝もまた
物凄い薄着で登場した。


「おぉ、来てやったぞ 森里…なんだ!その姿は!!」
その声は田宮先輩だった、そして
「精神がたるんどるのではないか!!」と大滝先輩が続く。


「ええー!!」
ベルダンディー達の薄着は解る。彼女達は女神なのだから、
人間とは構造が違うのだ。だけど、どうして先輩達は、こんな
寒いのに薄着で居られるんだろう。
まさか…先輩達も、異世界人なのか?


「折角こうして来てやって、あまつさえ贈呈品までも用意して
やっていると言うのに…仕方ない…」
田宮先輩は、ホトホト参った、と言った顔をして
「森里!!この贈呈品を賭けて、俺達と勝負だ!」
「おぅ!勝負だ!森里くんっ!」 と大滝も続く。



それを見ていたベルダンディー
「あらあら…折角、お茶を用意したのに…でも」
でも、これは男の戦いですもの!螢一さんっを応援しなくちゃ、
と決意を固めるのだった。


「森里ー!まずはその着過ぎの服を脱げっ!」
田宮は怒号する。
「そうだ!そして、コレを持って外に出るんだ!」
大滝は懐から手拭を一枚出して、螢一に渡した。


「ええー!!一体、何を…」
動揺を隠せない螢一は、ある事に気がついた。
「ま、まさか…この俺の体を…」
まて、まて、まて!それだけは勘弁してくれと心で叫んだ。


「ああん…?何を言っているのだね、森里くん」
田宮先輩は怪訝そうに螢一を見た。
「そうだ!男の戦場は、いつでも外だろう!」
さらに大滝先輩が続く。


「外? この上半身裸で?」
螢一の疑問符は最大になる。
「そうだとも!この冬空の下で、我々と乾布摩擦大会だ!」
田宮先輩の号令に、大滝先輩が補佐する。
「そうとも、どちらが先に根を上げるか…勝負したまえ」


「我々に勝利したあかつきには、コレを進呈する」
そう言って、一枚のカードをヒラヒラと螢一に見せ付けた。


 つづく。


by belldan Goddess Life.


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次回予告! なし!(笑)