福引編(男の戦い)

そんな訳で、螢一とベルダンディーは猫実商店街へと向う事と
相成るのである。
しかしここで、はてな?と思う事がある。
あの姦しい小姑であるウルドとスクルドが着いて来ない。


ウルド曰く「あ〜メンドクサイから、お酒だけ頼んだのよね」
スクルド曰く「あ、あたしは…その、仙太郎君と…(赤面)」


なのだそうだ。


それは舞い降りてきた幸運なのか、それとも棚から牡丹餅って
ヤツなのか、それは分からないが、それでも久方ぶりのふたり
だけの時間を取る事が出来たのは、螢一にとって、そして
ベルダンディーにとっても嬉しい事だった。


「何だか、久しぶりですよね?」
「うん…そう、だね…」
満面の笑みで螢一の横に立つベルダンディーは、螢一の横顔を
見詰めながら 「螢一さんっ」 と改めて声に出した。
その軽やかに歌うような声に、ドキっとする螢一は
「な、なに?」とドギマギ感を隠せないでいる。


「呼んで見ただけ、ですっ」
エヘッと悪戯っぽく笑うベルダンディーだった。


あの…そんな事をされては、俺が死んじゃうんですが。


そんなこんなで、いつも通い慣れている道を歩く。
散歩がてら、って感じなんだ。
バイクで向かっても良かったんだけど、何となくふたりで
肩を並べて歩くのも悪くないかなって。
こうしてふたりで歩くのも、実に久しぶりだ、と螢一は思った。


それにしても、本当にベルダンディーは薄着なんだよな。
1月と言うのに、薄いブラウスと同色のカーディガンだけで
何で寒くないのかな?と思う。
女神さまっだから、ってのもあるけど、だけど、客観的に見て
何だか俺が甲斐性無しに見られてしまうよな。
無論、マジで甲斐性は無いのだが、それを言っちゃあお仕舞い
だからなぁ、と螢一は考える。


この福引…一体何が当たるのだろうか。


福引券をジッと見詰める螢一に、ベルダンディーが不思議そうに
声を掛ける。
「どうしたんですか?」
「あ、いや…何が当たるのかなぁ、って、ね」
「大丈夫ですっ!きっと螢一さんにとって良い物が当たると私は
思いますっ!」
そう確信的に言われてもなぁ、と螢一は苦笑するのだった。


「だって、螢一さんっは勝者ですもの!」
うん、と頷いてガッツポーズを決めるベルダンディー


勝者って…何だかなぁ、と思う螢一だった。


同じ方向へと歩いているふたり。
そのふたりの間には、微妙な距離がある。
不可侵条約とか、絶対領域とか、何かそんな感じで。


でも、時々、それはまるで引力にひかれるようにお互いの肩が
ちょこんと触れる。


惹かれるように。


「あ、ごめん…」
「い、いえ…」


惹かれるようにして、くっ付いた肩は、弾けるようにして
離れて行く。


「あ…」
お互い、何だかちょっと淋しく思う。


そのとき、一陣の風がふたりの周りを舞った。


「きゃっ…」
「わわ…大丈夫か?」
それはごく自然に、螢一はベルダンディーの手を取る事となる。


「こ、こうして置けば、だ、大丈夫だと思う…んだ」
「け、螢一さんっ…はい...」
何だか恥ずかしくて、ふたりはお互いの顔を見られない。
でも繋いだ掌から、暖かいものを感じるふたり。


ふたりの距離が、少しだけ縮まる瞬間だった。


 つづく。


by belldan Goddess Life.


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デートかよ!てか、小学生じゃナイんだからっ!
次回「福引編のつづき」!