福引編(おわり)

「け、螢一さんっ そんなにガッカリしないでっ」
福引を終えた螢一に、成す術もなく声を掛けるベルダンディー
ガッカリと頭をうな垂れた螢一は、3等賞の商品券を手にして
1等賞の景品である、ペアでハワイ旅行の垂幕をボンヤリと
見続けていた。


ああ、1等ならベルダンディーと常夏のハワイに行けたのにな。


その落胆は、先程までの謙虚な気持ちとは裏腹だった。
振って沸いたような勝利だ。いや、先輩達のちょっとした
贈り物なのだが、それでも、結果としては1等が良かったと
考えるのは、人の絶えざる欲望の成せる業なのだろうか。


「う、うん…でも一応当たったんだから良し、だよね」
元気付けてくれる女神さまっのお言葉を拝聴して、諦めも付く
ものだ、と螢一は思う。
それにしても、3等の商品券。それは1万円相当のものだから
ちょっとした家計の足しにもなる。
いや、むしろここは、ベルダンディーと素敵なディナーと洒落て
みるのも、やぶさかではないだろう。


「そうですよ! でも螢一さんっ? ソレって何ですか?」
螢一の持っている商品券を指差して尋ねるベルダンディー
「ああ、これは商品券と言って、いわゆる金券、お金の代わりに
なる物なんだ」 と螢一は答える。
「へぇ…」
不思議そうに商品券を見つめるベルダンディー
「面白いですねっ」
と、笑顔を螢一に向けるのだった。


この笑顔…これが一番の贈り物なんだよな、と螢一は思った。


ベルダンディーを見詰めた。それはとても自然に。
彼女、とても薄着だ。そして今は、1月。冬真っ盛りだ。
女神さまっにとって、寒暖は無関係、無問題なんだといつぞや
ウルドが言っていた。そりゃあウルドの服装を見れば分かる。
何時だって露出の激しい洋装で元気溌剌だもんな。
でも、それは置いといて…ふと周囲を見渡すと、どうもみんなが
ベルダンディーをチラチラと見ている。
もちろん女神さまっの中でもトップクラスの美貌の持ち主だから
それは分かる、分かるのだが、ちょっと視点を変えて見ると
どうして女性を薄着のままで放って置くのだろうか、とか
あの彼は、それは俺の事だが、トンでもない甲斐性無しだ、など
言われているような気もしてくる。


「なんだかなぁ…」
思わず口にしてしまった。
「どうしたんですか?」
あら?と言った感じでベルダンディーが反応する。
「い、いや…」
しまった、と思う。でも、そうだ!
「あの、さ…寒くないかい?」
「私ですか?ええ、大丈夫ですよ?」
「そ、そう…あ、でも、ちょっと面白い物があるんだけど」
「なんです?」
そうだ、あの量販店に行けば、リーズナブルなダウンジャケット
があったと思う。
「あのさ、羽で出来ている服って興味ないかな?」


「羽…ですか! わぁ〜」
ベルダンディーの瞳がくるりと変わる。興味を持ったようだ。


*** *** ***


「わー軽いですっ それに暖かいですっ」
淡いピンクのフード付のダウンジャケットを纏って、その場で
くるっと回転してみせたベルダンディー
「ありがとうございます…でも、良いのですか?」
折角、螢一さんっが手に入れた商品券なのに、とベルダンディー
は思う。
「うん、でも、本当に似合っている」
そう言うと、何だか照れ臭い気がして、視線を逸らしてしまう
螢一だった。


帰り道、そっと螢一の手を取り、着ているダウンのポケットまで
誘導したベルダンディー
「ね、暖かいでしょう?」
と言うと、螢一の傍にギュッとくっ付いてしまった。
「それで…こうすると、もっと暖かいんですっ」
螢一さんっ、と呼ぶ。それまで視線を逸らしていた螢一は、つい
ベルダンディーの方を見てしまう。


そこには、満面の笑みの女神さまっがいた。


ふたりの距離が、もっと縮まる瞬間だった。


 おわり。


by belldan Goddess Life.


*** *** ***


以上でお話は終了でーす。甘ぁ〜い(予定通りだー)