天上界の恋人2.

天上界の恋人2. 


ペイオースの”元”恋人と称する男性神が、思い余って地上界に
降臨すると言う次第になった。それは別段、天上界でも話題には
成らなかったのだが。男性神の真名はバルドと言った。そして、
その名は天上界でも一目置かれている存在であった。
天上界ユグドラシルの制御室では、三人のオペレーター女神達が
噂を囁きあっていた。
「ねえ聞いた?ペイオースの・・・」
「ええ、”元”恋人さん・・・ですよね?」
「クスクス・・・”元”だなんて・・・ねぇ?」
三人女神達が、どこに着目していたのかは、定かではないが、だが
その男性神、バルドは、どうやらかなりの問題児、と言うか神だと
言う事は間違いないであろうと推測された。


一方、初めての地上界への降臨となったバルドは、天界ゲートを
くぐり抜け、光のチューブの中で思案を繰り返していた。
「早計だったかも・・・いやいや、そんな事は・・・わたしに限って」
善は急げ、と言う。思い立ったが吉日とも言う。そんな事を、
あれこれと考えていた所で、目標地点である他力本願寺の境内へと
無事到着した。
神属のゲートが構築展開される。その事に気づかないノルン達では
なかった。
「姉さんっ!この気配は・・・」
「うん・・・天上界の・・・かなり大きな・・・」
「おね〜さまぁ・・・」
そんなこんなで、ノルン達は、それぞれの法術を展開しながら、
警戒を怠らなかった。
空からの一条の光が、空間に雲散霧消すると、そこに小さな男の子
が不思議そうに立っていた。
神衣を纏ったその姿は、まさしく神属だったが、何だかとても
頼りなさそうな風体であった。


「姉さん?あの方は・・・可愛いですねっー!!」
「あれ?かなり大きな気配を感じたんだけど・・・?」
「おね〜さまぁ・・・誰?」
ベルダンディーが、バルドの傍まで近づき、声を掛ける。
「あなたは・・・誰でしょうか?」
ウルドは遠目から、じっと傍観していたが、
「あれあれ?もしかして・・・天界の迷子?」
と首をかしげた。
スクルドは、ちょっと恐々だったが、小さな男の子を姿を見て
何だか安心し、お姉さま風を吹かせたい気分になって、
「君・・・迷子なの?お姉さんが探してあげようか?」
ベルダンディーの後ろから声を掛けた。


なるほど、この者達がノルンの三姉妹・・・バルドはじっと見据えた。
だがその視点はベルダンディー達にとって、心細げな子供の目に
しか映らなかった。
「わたしは、バ・・・」
しまった!今ここでわたしの真名を告げては・・・


「バ?」
ベルダンディーは不思議そうにバルドの言葉を復唱する。
「ん〜バ・・・バカ?」
ウルドは思い付きで、その続きを言葉にする。
「えー?!バ・・・バナナが食べたい?とかじゃないの?」
スクルドは、どうしてだか知らないが、男の子の保護に回った。


「あっ!お腹が空いているのねっ!?」
ベルダンディーはちょうど頭上にランプが点ったような表情で。
「ほう・・・タダ飯食いに来たって訳?」
ウルドは呆れた顔をして。
「だったら!お姉さんに任せないさい!」
スクルドは保護者の気分に浸ったのであった。


「ところであなたのお名前は?」
保育園の保母さんの如くの慈愛でバルドに名を尋ねたスクルド
ちょこんとベルダンディーの横にしゃがんで楽しそうだ。


「あ・・・わ、ボクは・・・フォルセって言うの・・・」
我ながら、何て身勝手な!とは思うものの、自身の分身の名を語っ
たのは正解だと思ったバルドだった。
しかもこの姿なら、ノルン達に怪しまれずに済むし、何よりも
聞きたかった事が、何の問題もなく解決するだろうと、割と安易に
考えたバルドだった。


「あ、あのね・・・以前ここにペイオースさんが来たって聞いたの」
うん、我ながら子供演技が板に付いているな。
「それでね・・・森里さんって人に聞きたい事があるんだ・・・」
ダメかな?と子供がおねだりするような仕草も完璧に決まった!


何とか上手く潜入出来たとバルドの本体は、ニヤリと不敵な笑みを
こぼすのだった。


by belldan Goddess Life.


続く?