天上界の恋人5.5

天上界の恋人5.5


「はいっこちら・・・あら?ベルダンディー?」
天上界のコントロールブースで、華奢な猫脚のチェアーに腰掛て
ペイオースは受話器を取った。
「珍しいわねぇ・・・どうなさったのかしら?」
いさかか疑問も在るのだが、懐かしい声に心は飛翔していく。
あの頃、そう、それは森里さんの所へバカンスに赴いた時期の事。
たくさんの初体験、たくさんの思い出を貰って帰って来た。
そこにはほんのりと淡い思いもあって、それは今、地上界からの
御土産として持って帰って来た少女漫画に散りばめられていた。


それはもう、不思議な出会いでした。


もしかしたら、わたくしが最初に出会う女神として、森里さんと
だなんて・・・ちょっぴり乙女チックですわね、とペイオースは
頬を緩ませた。




『カットー!!』



「って・・・あら?これから良いシーンですのに!無粋だわっ」
『すみませーん、ペイオースさん。ちょっと監督が・・・」
「どうされたのかしら?」
『・・・あ、あのぅ、言い難いのですが、病で・・・』
「まぁ!それは大変っ!でしたら、わたくしが何とか・・・」
『い、いや・・・それは大丈夫かと・・・って、わぁー!!」
「あら?コレは何ですの?新しいシナリオかしら?」
ペイオースは見慣れないシナリオを拾い上げた。


うっかり落とした助監督は、顔面蒼白だった。
パラパラとページをめくるペイオースの表情が、みるみる真っ赤に
なって行く。
「な、何ですの!これは・・・」
『あ、いや・・・これは、そのぅ・・・』
「監督さんは?お話を聞かせて頂きたいですわっ!」
『・・・すみません、監督は遁走中でして・・・』
「逃げた、と言うのですか?」
『あ、いや・・・そんな事は・・・』


「とにかく!次回はちゃんと撮影してください!」
『はいっ!監督にも伝えて置きます!』


そんな訳で、進行遅れております・・・ハイ。


by belldan Goddess Life.