姉もねっ!

ホワイトディの贈り物 姉もねっ!


そんな訳で、ご返済と言う次第になったホワイトディ。
森里螢一は少し悩んで、無難な路線を選ぶ訳だが、だがそこは
女神さまっと共に生きる事を願った男の悲運(いや、幸運か)が
何かを予兆していた。
「ベ、ベルダンディー!あの・・・これ俺からの・・・」
「わぁ〜可愛いクッキーですねっ!」
「う、うん・・・在り来たりだけど、さ」
「嬉しいっ!ありがとうございますっ螢一さんっ!」
「うん・・・」
まぁ、だいたいこんな感じで、ホワイトディは事無きを得て
万事快調に収まると思っていたのだが。
ベルダンディーは、頂いたクッキーを一緒に食べようと、螢一を
誘ったのだった。
「縁側で待っていてくださいねっ お茶も用意しなきゃ」
そう言ってイソイソと台所へと向かった。


縁側で待つ事しばし、何時ものようにトレーにお茶、そして
螢一からのプレゼントを乗せてベルダンディーが登場した。
「お待たせしましたー」
はい、どうぞ、とベルダンディーは嬉々として螢一の横に座り
紅茶の入ったカップを手渡した。
「ありがとう、ベルダンディー
そう言ってカップに手をやる螢一の指先に、ベルダンディー
指が触れた。
「・・・ん」
ベルダンディーは甘い吐息を漏らした。
何と言うか、非常に艶やかな音色を含んだ声だった。
「・・・あ、」
螢一も言葉にすると同時に、指先から電流が走った気がした。
その電流にベルダンディーの思いが添えられているような感じが
した。


「螢一さんっ もっと傍に寄って良いですか?」
「えっ?あ、うん」
ベルダンディーは、螢一の傍にその身を少しよせた。
その間は、わずか数センチとなる。
何だか急に無口になってしまう螢一だった。
「ねぇ螢一さんっ・・・螢一さんっも傍に来てほしい・・・」
「・・・うん」
そのわずか数センチの空間を埋めるように示唆する彼女の時間は
いったいどれ位の時を刻んだのだろうか。


ふたりの距離は、紙一枚通るか通らないかの距離になる。


「もっと・・・」
「・・・えっ?!」


これ以上は無理だよベルダンディー、と螢一は思う。
後はふたりの肉体がぶつかり合うか、重なり合うしか方法は無い。
しかもこんな姿をスクルドやウルドに見られたら、大変な事に
なってしまう、と螢一は周囲を警戒した。


スクルドは留守ですよ螢一さんっ」
あ、そうか・・・たしか仙太郎君と・・・。
「それにウルド姉さんも・・・」
そう言えば、確か忙しいとか言ってたな。


「えいっ!」
急に螢一の大腿骨の上が重くなった。
「ほら、これでもっと近くになった!」
螢一の眼前には、麗しい女神さまっの微笑があった。
「でも・・・困りました・・・これ以上、傍によるには・・・」
そんな事を言いながら頬を染めるベルダンディーだった。


構図としては、螢一の太股の上に横座りをする格好なる。
ベルダンディーは螢一の肩から背中に腕を回して、バランスを
取っていた。
「そ、傍によるには?」
螢一は、ゴクリと唾を飲み込んだ。


「傍によるには・・・夜が良い。なんて・・・」
言った本人も、聞いた者も赤面してしまう様なギャグに
ふたりは再び真っ赤になってしまった。


前日、ベルダンディーはウルドに相談を持ち掛けていた。
「姉さん、もっと螢一さんっの傍にいたいの・・・」
「うん!良い心掛けだわねっ!だったら・・・」
そう言ってウルドがレクチャーしたのが、この有様で。


ベルダンディーは姉に感謝した。
「姉さん、私・・・素直になって良かった!」
螢一はウルドを恨んだ。
「あんまり変な事を教えないでほしい・・・」


 おわり。



by belldan Goddess Life. 


つい・・・