「義理ホワイトディ」

「あ、ありのまま・・・あの日起こった事を話するぜ・・・」


大滝彦左衛門は、盟友 田宮寅一と共に猫実工大の院生だ。
先日、そう、それは乙女の一大イベントの名に相応しいあの、
バレンタインディの時に起こった事件が事の発端だった。
ひょんな事から、大滝にチョコを貰った田宮の行動は、相変わらず
常軌を逸していた訳なのだが・・・


3月14日 10:00(ヒトマルマルマル)
某研究室にて。
「おおーい、大滝ー!大ちゃんはおらんのかー!」
同日 10:30(ヒトマルサンマル)
同学内教室の廊下において。
「うおー!大ちゃーん!俺だー!田ちゃんだー!」
11:00(ヒトヒトマルマル)
学食にて。
「どこだー!どこにいるんだー!」


そう、田宮は大滝を探していた。
しかも、ホワイトディに相応しいと自己判断した洋装をして。
だがそれは、誰が見ても異形の者としか判断は出来なかった。


その頃、大滝は難を逃れる為に、自動車部の部室に篭っていた。
一見して最初に発覚されそうな場所を選んだのには訳があった。
ひとつは、剣を隠すには、剣の中だと言う事だった。
もうひとつは、きっと森里が何とかしてくれると、と。


まさに神頼み。と言うか、女神さまっ頼みになる訳だ。


「先輩・・・何してるんです・・・」
現部長の長谷川が、とっても嫌そうに大滝に尋ねる。
「聞くな長谷川・・・これには深い訳が・・・」
部室内のガラクタと同一化した大滝が哀願するように答えた。
「分かりました・・・で、あたしは森里先輩家に連絡すれば良いので
すよね?」
とっても深い溜息を付きながら、長谷川は部室を後にした。   
「頼んだぞ!長谷川っ!」
そう言うと大滝は、こそこそとガラクタに隠れて行くのだった。


校舎の裏にある、バイク置き場まで向かった長谷川は、ポケット
から携帯電話を取り出して、ワールウインドに電話をかけた。
事の次第を話して、携帯をポケットに仕舞い込み、フゥーと溜息を
再び付く。
「これも部長の仕事・・・なのかなぁ・・・」


ワールウインド店内。 11:23(ヒトヒトニイサン)
「うん、分かった。千尋さんにも頼んでみるよ」
森里螢一は受話器を置いて、掛け時計を睨んだ。
うん、昼休みに抜け出せば何とか・・・それと、今回はベルダンディー
には言わないで置こうと考えた。
と言うか、現在彼女は千尋さんのお使いで外出中だし、帰る時刻は
多分お昼を少し回るだろう。
千尋さん!あの、俺・・・ちょっと、昼は大学に行ってきます」
「なぁに?このわたしを独りぼっちにするって訳なの?」
「ち、違いますって!ちょっと自動車部の・・・」
「ああ・・・またあいつ等が何かしたのね」
「う・・・まぁ、そんな感じで」
「了解。でも、ちゃんと時間通りには帰ってくるのよ!」
「ラジャー!」


ワールウインドの店の裏にまわった螢一は、自分のBMWを他所に
小さなバイクへと足を運んだ。
「ちょっと借りるよ」
KSR80は、妹である恵のバイクだ。
昨日酔っ払った恵が置いていたものだ。
夕暮れには取りに来るから、と連絡があったので、それまでに
返せば問題ないだろう。
キーを差込み、各種ランプを点検し、おもむろにキックをくれた。
乾いた排気音が響く。我が妹ながらメンテには隙がないと思った。


KSR80は、大学へと向かった。


by belldan Goddess Life.


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話が長くて・・・続きます。と言うか「天上界の恋人」よりも
長くなりそうな気配が?