天上界の恋人11.

天上界の恋人11.


そんな訳で、小さなバルドを引き取って天上界へと帰還した
ペイオースだったのだが・・・


「えっ?ちょ、ちょっと・・・」
ゲートをくぐり抜け、それまで手を引いていた小さな男の子の姿が
みるみる変わって行く。
「ああっペイオース・・・」
その声は確かに聞いた事がある声だ。そう、従来のバルドの声。
「愛しいペイオース・・・やっと私の愛に気が付いてくれたんだね」
瞳を潤わせて、バルドは愛の言葉を囁く。
繋いでいた手を優しく引き寄せると、そっとペイオースの体に手を
回して、抱擁するのだった。
「私の愛を受け取っておくれ・・・」
そう言うとペイオースの口元までバルドは顔を近づけていった。


キス・・・


ではなくて!ちょっと!どうなっているんですのっ!


パッチーン!


バルドの頬を叩く音がこだました。
そして、天上界へ入り口へと辿り着いたふたりだった。
「な、何をなさるんですかっ!」
動揺したペイオースはバルドを罵倒する。
「何を?って・・・それは君が私の愛に気付いたから・・・」
先程ぶたれた頬をさすりながら、満更でもない表情をしながら
バルドは言葉を続ける。
「私を追って地上界まできてくれたんだ。それって愛の表現じゃ
ないのかい?おお、愛しいペイオース・・・」
ペイオースの体を引き寄せて、そのまま抱擁しようとした。
力では到底抗えない。どうすれば・・・とペイオースは思案した。


その時だった、周囲に人・・・と言うか神々達が居る事に気が付いた
のは。
クスクスと笑い声が聞こえて来る。
「まぁ、こんな所でラブアフェアーって・・・」
「大胆ですわねぇ・・・」
「あら?あれって1級神のペイオースじゃあ・・・」
「あらやだ・・・ホント、うふふ・・・」
以上、女神たちの囁き。


「ほぅ・・・ついにバルドのヤツ・・・難攻不落の牙城を落としたか」
「いやいや、まだまだ結論付けるのは早計かと」
「ついにツンデレ同士のカップルが!」
「俺は断じて認めない!ペイオースは俺の嫁だからなっ!」
以上、男性神達の囁き。


ペイオースは周囲の状況を見詰めて、顔を真っ赤にした。
このままではいけない。このままではわたくしのプライドが・・・


「秘儀っ!薔薇の乱舞ー!!」
ペイオースは高速で法術を展開させて、周囲を薔薇の嵐で覆い尽して
しまった。
「うぉーチクチクする・・・しかしこれが君の愛情表現か・・・」
何故だか知らないが、うっとりするバルドを尻目に、その場から
立ち去ったペイオースだった。



それからもバルドの執拗な求愛活動は続いたのだが、ペイオースは
「子供の姿で出直して来なさい」と一蹴した。
それを聞いてトボトボと引き上げるバルドの背中に、あの小さな
男の子の姿を見つけ、「はぁ・・・」と溜息をつくのだった。


掌には、小さな手の感触がまだ残されてて、時折思い出してみる。
「いつか、わたくしにも・・・」
ペイオースは優しく、そしてちょっぴり切なく微笑むのだった。



天上界の恋人。 END.


by belldan Goddess Life.


*** *** ***


と、言う訳で1クール終了。
相変わらずのグダグダ物語の終わりである。
最後まで読んでくれた奇特な方、感謝ですー。