相合傘で

小鳥の鳴き声で目覚めた朝、自然に意識が覚醒したような気が
した。
不思議な静寂の中で、確かに心だけが鋭敏に捕らえる出来事は
いつだってこんな感じなんだ。
今、彼女は朝の献立を完成させて、満足げに笑みを浮かべてる。
そして台所を出て、廊下を歩き、俺の部屋まで来るのだろう。
布団から起き上がった俺は、両腕を軽く上げてのびをした。
窓の方を見る。梅雨時には珍しい晴れ間が見える。
五月晴れ、だなと俺は思った。しかし6月の梅雨時の晴れ間を
五月晴れとは面白いな。まぁ、それは多分旧暦から来ているの
かも知れない。
「ふぁ〜」知らずに出てくる欠伸が、どうしてだか空腹を感知
させて来る。


「螢一さんっ おはようございますっ」
襖がそっと放たれ、そこにはにこやかかな笑顔の女神さまっが
立っていた。
「おはようベルダンディー、さっき起きた所なんだ」
俺は彼女に向かってそう言うと
「ええ、分かってました。うふふ・・・」
私が感じた時、小鳥さん達も一斉に「螢一さんが起きたよ」って
伝えてくれたんですもの。
「そうなんだ・・・」
俺は不思議に思ったが、これはよくある何時もの事だ。
「今日は良い天気だね〜」
俺は話を切り返して言った。
「ええ、でも・・・午後からは雨が降りそうですよ」
俺の部屋の窓の外を見ながら、彼女は
「さっき小鳥さんが教えてくれたんです」と言った。


「そ、そうなんだ・・・」


今日は大学へ行かなくちゃならない。未だに在学中の身としては
たった一つの単位の為だけになるのだが、だからこそ疎かには
出来ないのだ。
そんな訳で、朝食を済ませた俺は、ワールウインドではなくて
大学へと向かった。
午後からの雨の知らせを聞いていたので、バイクではなくバスで
向かった。


ちゃんと傘を持って。


所が講義を終えて、傘を捜したのだが、周囲には見当たらない。
「あれ?」
もしかして、先に部室に向かった際に、先方で忘れてきたのでは
とも考えた。
「とにかく、一度部室へ・・・」
向かった部室は、誰も居なくて鍵が掛かってあった。
「うわ・・・」
長谷川に連絡しようとしたが、生憎俺は携帯を持ってない。
仕方ない、院の方に行って先輩たちにで傘を借りようか、と思った
けど、多分・・・いや絶対彼らは傘など持ち歩かないだろう。
「う〜ん、困った・・・」


でも、傘はどこに行ってしまっただろう?


教室で誰かが間違えて持っていってしまったのかな。


「螢一さんっ」
聞き覚えのある優しい声がした。
「ベ、ベルダンディー! どうして?」
彼女はワールウインドにいる筈だ。
「はい、忘れ物・・・」
彼女はそう言って、傘を差し出した。
「え?忘れ物・・・って?」


思い出した。
朝の支度をして、家を出る際に玄関先に傘を用意した。
「行ってきます」
そこで忘れたんだ。


「でも、嬉しい。だって螢一さんと相合傘できるもの」
ベルダンディーは嬉々として告げた。


相合傘で。


by belldan Goddess Life.


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みんしゅとーカンちゃん・・・浅墓ナリ。
それを知らせないマスコミ各社も浅墓ナリ。


そんな事より、ハヤブサおかえり〜。