俺の女神さまっ

「・・・俺は、ベルダンディーの事が大好きだぁ〜〜!!」


誰もいない母屋の、とある部屋で男の叫びが響き渡った。
ウルドは醸造酒の品評会とやらで留守だし、スクルドに至っては
仙太郎君との逢瀬で、随分前に家を後にしていた。
そしてベルダンディーは、猫実商店街にお買い物、と言う訳だ。
ふぅ、と溜息を付いた森里螢一は、周囲を気にしながらも
ようやく言えた心にある思いに、満足感を感じていた。


「でも・・・本人の前では言えない、よなぁ・・・」
照れもあるし、それが本心だとしても、女神さまっを前にして
そんな事を言うのも憚れるなぁ、と思った。
もっとこう・・・何て言うのかな、自然に言えたなら、どんなに
良いかとは思う。
これが普通の男女の事だったら、もっと楽に言えるのかな、と
考えたが、待てよ、俺は一度だって楽に言えた事は無かった。
釧路での生活、それは高校生だった頃の自分を降り返って見た。
気になるクラスメイトが居たが、何にも出来ず、ましてや告白なぞ
夢のまた夢・・・そんな感じだった。
大学生になり、一念発起して告白した女性には相手にもされなくて
とんだ恥をかいてしまったのが、つい昨日の事のようだ。
そんな俺の元に舞い降りて来たのが、なんと女神さまっ。
幸運なのか、はてさて不運の始まりだったのか、その答えは未だに
出せず仕舞いだ。
ロマンチックに考えて、もし俺の生涯の相手が女神さまっなのだと
したら、これは幸運なのか?それとも不運なのだろうか?


或いはこれすらも贅沢な悩み、と言うものなのだろうか。


思考の海に埋没していると、我知らず眠くなってくるのは自然の理。
転寝を始めたのは、多分お昼前だと思う。
気が付けば辺りは暗くなっていた。


雨だ。


雨雲がどんどん地上近くに降り立って、空気を冷やして行く。
6月には似合わない温度に、背筋が震えてくる。
「寒っ・・・」
慌ててTシャツの上にシャツを羽織り、飛び起きた。
雨粒が瓦屋根を激しく叩くのが聴こえる。
ベルダンディー大丈夫かな・・・どこかで雨宿りしていると良いのだが。
そう思うと、本当に体が自然と玄関先へと向かう。
下駄箱から長靴を取り出し、傘を用意して、バス停まで向かった。


待ってて、すぐ迎えに行くから、ベルダンディー


俺の女神さまっ。


by belldan Goddess Life.


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もうすぐ7月、選挙ですね。