文月

今まで低く垂れ込めていた雨雲に光差し込んで来ると
灰色から真綿色へと変化して、やがて雲の切れ間から
日差しが現れる。
天使の梯子って、言うんだよね」
そう確か聞いた。それは以前、どこかで、なんだけど。
光の梯子が、あちらこちらに登場すると、今まで霞んでいた
世界は、明るい色を取り戻して来るのだった。
ベルダンディーはとても名残惜しそうに、それまで二人を包んで
いた傘を閉じて、雨粒を振るい落として言った。
「光の階段ですね」
傘から落ちる雨粒が、光に当たってキラリと光る。


ふわりと風が舞った。
それはきっと彼女から発進されたんだろう。
その風が上昇し、気流に乗り、世界を清浄させて行くんだろう。
「あ、螢一さんっ 虹ですっ」
「本当だ!」
雨上がりの贈り物は、いつだってサプライズなんだ。


閉じた傘を持っていたベルダンディーに螢一は言う。
「その傘、俺が持つよ」
今まで傘を持っていた手が空いたら、何を持てばいいの?
「さぁ、行こうか」
空中で手持ち無沙汰な彼女の手を取って、螢一は笑った。


雨上がりの虹は、世界を繋ぐ架け橋。
それは心と心を、君と俺を繋ぐ架け橋。


文月。


by belldan Goddess Life.


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気象情報なんて、気にしない。
日々之好日。