感謝する心。

思い起こせば、こうして雨の中の紫陽花なんて見詰めた事
なかったな。ふたりで相合傘、悪くない。ちょっとおどけて
みたりするのは、照れている証拠なんだ。
俺の髪の毛は、湿気にやられて少ししんなりとしてる。
君はどうだい?そう思って君の方を見た。


あれから何年過ぎたんだろうと思った。
雨の中、見詰めた君の姿が幾重にも重なってみえてくる。
季節の中でいつまでも微笑を返してくれている君の顔に
不思議と目頭が熱くなって来た。
例えば春の桜の木の下で、例えば夏の浜辺で海風を受けて
例えば秋の散歩道で、例えば初雪に驚いている表情を


君の笑顔に見つけたんだよ。


いつも日常にあふれている風景は、それが当たり前にように
在ると疑わない自分が居て、それなのにその姿もちゃんと見ては
いなくて。
本当は知らなかったんだよな。世界はこんなに素晴らしいのに。
小さな頃に教えられた事は、肌に刷り込まれているかのように
当たり前だと思っていた。


例えば神さまは居ない、とか。


だけど君と居る事で、世界はこんなに素晴らしいと感じずには
いれない。
この世界は、誰が作ったんだい?と自問してみた。


「螢一さんっは、信じますか?」
この紫陽花も、世界を構成している大事な一員だと言うことを、と
ベルダンディーは伝えた。
「…分かるような気がする」
螢一は紫陽花を見詰めながら、そう答える。
「この子達は、信じているんですよ」
そっと紫陽花の花びらに手を添えながらベルダンディー
「この世界は、ステキなんだよって」
ゆっくりと螢一の方を向き、そして何時も通りの笑顔で云った。


螢一は、その笑顔を受けて、そっと瞳を閉じてみた。
そして想像してみた。


信じて仰ぎ見る季節の花は、いつだって空を目指している。
きっとそこにはベルダンディー達がいる天上界があって、皆が
いつでも、どこでも感謝しているんだよな、と。


「ありがとう」
螢一はそっと紫陽花につぶやく。そして
「ありがとう」
今度はベルダンディーに向かって云った。


ちょっと照れくさいけど、何だか心地良いな。


感謝する心。


by belldan Goddess Life.


*** *** ***


届け届け私の思い。