努力即幸福 その2.

母屋の裏にあるガレージから、庭へと足を運び、縁側に出る。
そこには麗しい女神さまっの、これまた飛び切りの笑顔があった。
「ありがとう、ベルダンディー
螢一はそう言うと、縁側に腰掛けた。
「あ、ヤベ・・・手を洗わなくちゃ」
自身の掌が、オイル塗れになっている事を思い出した。
「待って、螢一さんっ」
手洗いに向かう螢一を呼び止め、ベルダンディーは伝える。
「私も・・・一緒に・・・」
何でベルダンディーは、一緒にだなんて言ったのかな、と螢一は思うが
別段断る理由も見つからない。
「あ、うん・・・」


洗面所で手を洗う事、それは大人なら誰でも一人で出来る事だ。
それなのに、どうして俺たちはこうしてふたりして洗面台の前で
突っ立っているんだろう。
「あっと・・・じゃあ手を洗おうかな」と螢一は呟く様に言うと
「それでは私が手伝いますねっ」とベルダンディーは袖を捲る。
両手を出してくださいね、螢一さんっ、とベルダンディーは螢一を
促した。
「あ、うん・・・」
不思議に思うんだが、別段断る理由が浮かばない。
ベルダンディーは自身の掌に石鹸を取ると、上手に泡立てて行く。
そして大きなシャボンの塊が出来あがると、螢一の掌に乗せて丁寧に
洗って行く。
オイル塗れの掌だから、螢一としてはタワシでゴシゴシと洗いたい所
なのだが、それでも洗って貰っている以上、そんなリクエストは出来ず
為すがままでいるのだった。


ちゃんと落ちるかな・・・オイルの汚れ。そんな事が脳裏を掠めて行く。
まぁでも、落ちてなければ後でタワシで擦ればいいんだから、と
事後展開を構想して、ボンヤリとしていた。


それにしても、何て心地良さなんだろう。


ベルダンディーは一心に手を洗っている。それにとても嬉しそうだ。
少し鼻歌なんか聞こえて来る。心地良いメロディだ。
「私・・・好きなんです」
そう言って頬を染めながら螢一に云う。
「そうだよね、ベルダンディーはキレイ好きだもんな」
うんうん、と螢一は頷いた。
「ち、違います・・・お掃除は好きだけど・・・そう意味ではありませんっ」
少しムクレる女神さまっである。
「私は・・・その、螢一さんっの手が好き・・・なんです・・・」
そう言うと恥らいながら螢一を見詰めるのだった。


俺の手が好き・・・って言う事は?


「努力即幸福」その2.


by belldan Goddess Life.


*** *** ***


話は横道に逸れようと・・・