女神さまっの宴 7

雨の中を一目散にして庭の池まで駆けていく螢一のうしろ姿に
ベルダンディーは声を掛ける。
「螢一さ〜ん」
まるで雨なんか気にしていないって感じで走る螢一に向かって
彼女もまた、その雨の中を駆けて行った。
池のほとり、目を凝らすようにして中を見詰める螢一の横顔が
雨に濡れて、前髪が額に張り付いている。
「あ〜無いなぁ…あれ?何か光った…ような気がする?」
何かな?と螢一は池の中に手を入れてみた。


それは小さく光る…100円玉だった。
「おっ!ラッキー! じゃなくて!ええい!どこにあるんだ?!」


「螢一さんっ?」
「あ、ベルダンディー ほら、100円拾ったよっ!」
「まぁ!」
えへへ、ウフフ、と二人は見詰め合い笑った。
この調子で探せば、リンドの斧の一つや二つは…と思ったのだが
リンドの愛用の斧は、多分一つだ。
それはともかく、ふたりは懸命に探したが、池には斧が無かった。
「無いなぁ…100円玉しか」
「あら、でも大収穫ですねっ!」
「そうだよね」
「ええ」


それからベルダンディーは螢一に向かって真摯な面持ちになり
「あの…螢一さんっ、リンドの落とした神具って、実は法術で探す
事が出来るんです」
ごめんなさい、と言ってベルダンディーは頭を下げた。
「あっ!そうか…君達神属って、そんな事が出来るんだったよね」
つい早合点し、行動に出てしまった事を照れ笑いでカバーしようと
螢一も謝罪する「ごめん、ちょっと早計だったよね」
そう言いながら、ベルダンディーの姿を見た。
雨の中だ、当然身体は雨に濡れているのが判るのだが、着ている服
が雨に濡れて身体にぴったりと張り付いている。


体のラインはおろか、彼女の大事な所まで透けて見える。
なんで下着を…って、そうか、さっきまで台所で…
見ちゃいけない!と言うか、誰にも見せる事なんてイヤだ!と螢一
は思い、自分の着ていたシャツを脱いで彼女に肩に掛ける。
「螢一さんっ?」
「あっゴメン…濡れているんで…実は、ちょっと透けてる…」
「え?あっ! あの…その…」
「い、いや…見てない!って見たけど…ち、違うから!」
何が違うのか、自分で何を言ってるのか分からない螢一だった。


「何て言うか…そう!英語で言うと『オーノー!』って感じで…」
あれ?…もしかしたら、さっきのリンドの言いたい事って…
「あのさ、ベルダンディー…ちょっと法術で探し出してほしいんだ
けど…リンドの斧なんだけど」


「はい…ああ、リンドの斧は彼女の耳に…あら?」
不思議そうに螢一の顔を見詰めながらベルダンディーは答えた。


玄関先を見ると、ちょっと悲しげで心配そうにして池の方を
見ていたリンドが居た。
螢一とベルダンディーはお互いの顔を見詰め、頷き合うと
ゆっくりと玄関先まで歩き出した。


女神たちの宴/宴の準備をしようよっ


by belldan Goddess Life.


*** *** ***


先日、某県の山中へ行って参りました。
秋の気配、こんな所にあったんだね!