ある日の出来事 4.

見上げた空には、鳶がくるりと輪を描いていた。
「鳥さん・・・?」
何だろうと思って傍にいる筈の猫の方を見ると、そこにはすでに
猫の姿は無かった。
「あれ?」
不思議に思うマリアベルは周囲を見渡したのだが、姿は無い。


何だかバカみたい、あたしって・・・


悲しみに暮れていた意識が半分くらいは削がれた様な気がした。
「あーあ・・・」
でも、ママは怒っていた。ママはとても悲しい表情であたしを見た。
一体何がダメだったんだろう、とマリアベルは考える。


遠くから乾いた排気音がしてくる。
緩急する音は、何故か心に響いて少しだけ安心を得るのだった。
マリアベルはパパを出迎えに裏門へと駆け出して行った。


山坂道をすべる様して駆け抜けて来たバイクは、お寺の横道を上がり
裏門へと辿り着いた。アイドリング状態で裏庭にある納屋まで行くと
そこに小さな女の子が立っていた。
「おっ、お出向いかい? 嬉しいなぁ」
ヘルメットを取った螢一は、マリアベルに笑顔を投げ掛けた。
「・・・お帰りなさい・・・パパ」
パパの笑顔を受け取って、その優しい表情が何故か心に痛かった。


気が付けば、両目から涙がこぼれている。


「パパ〜!」


風がそよぎ、裏庭の木の梢を揺らして行く。
空には鳥が、そして木の根元には、先程の猫が二人の姿をじっと
見詰めていたのだった。


ある日の出来事 4.


by belldan Goddess Life.


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ご無沙汰しております・・・