2月の朝 その5

タイツおじさんから、タイツ魔人へ…


その頃、猫実工大自動車部の部室から、妙なふたりが現れて
風のように、と言うか疾風と言うか、いや違うな、嵐とでも
言うべきなのだろうか、小さなバイクにタンデムして姿を
消した…。


後に現・自動車部の部長である長谷川空は語った。
「その姿は…魔人のようでした…悪夢だわっ」


全身黒いタイツで覆ったふたりの向かう先は何所に…



さて…


森里家の螢一の部屋では、何やら不穏な動きがあったようだ。


ウルドがレクチャー?それって…
「決まっているわよっ、性教育ってヤツ」
「聖教育!」
聖なる教育とは何だ! まさかウルド、俺を天上界の住人に…
螢一は頭を抱えるのだった。


「あんたが何を考えているか、知らないけど、たぶん…
それ、間違っていると思うわよ」
ウルドは溜息まじりで伝えた。


またしても心を読まれてしまった!と驚く螢一であったが、
やはり、と言うか、ウルドはさすがに女神さまっであった。


「さすがに…それは遠慮して置きたい」
螢一は真摯にウルドに伝える。
「でも、それじゃ〜あんたが困るわよ?」
困るって何を?って、分かっているけど流石にウルドには…
「それとも…あたしってそんなに魅力、ない?」
ウルドはシナを作って螢一に迫ってみたりする。


魅力が有り過ぎて困る!とは流石に言えないだろう。
しかし何だ、この状況下でベルダンディーのピンポイント攻撃が
無いのは何故だろう。
まさかウルドが結界を張ったのだろうか。


螢一は一念発起するのだった。
よし!ここは先ほどのオオボケで誤魔化すしかない!


「色即是空、色即是空…」
「あんた…何言ってるの?」
「お経だよ、聖なる言葉さ」
「それが性教育と、どう繋がるって言うのよっ」
「へっ?聖なる教育だろ? つまり、神の教え…」
螢一は思い起こしていた、以前読んだ仏陀の物語の中にある
降魔の話だ。
確か、悟りを開いた仏陀が木の下で瞑想している最中に、魔が
誘いにやって来て、女性の魅力で彼を惑わそうとして…って!


あれ?ウルドは女神さまっ でしたよね?


「はぁ?」
ウルドは呆れて物が言えない。
「…ケーイチ、あんたには恋愛はまだ早いってコトね」
ウルドはすっくと立ち上がり、踵を返して部屋を出て行く。
「ま、何か相談事が出来たら、いらっしゃいな」
そう言い捨てて、襖を閉めて行った。


束の間の静寂、そして訪れるのはいつもの疑問だった。
俺とベルダンディーは、ちゃんと進んで行ってるのかな。
人間と女神さまっの恋愛って、一体どこまで行くんだろうか。


好きじゃ〜!とか言って押し倒して…


それって、ただの欲望じゃんか…


2月の朝 その5


by belldan Goddess Life.


*** *** ***


ああっ2月が終わっちゃう!
(話は終わらないのにねっ!)