秋の考察

ウルドいわく、
「いわゆる恋愛って言う物は『ふたりで愚かになる』って定義を
過去の誰かさんが言ってた訳なんだけど、それは半分正解で、半分は
ハズレだとアタシは思う訳。と言うのは、恋愛ってのは主観と客観が
相互に干渉しつつ径行するのが事実なんだと思うのね」


「何を言っているのか、アタシはさっぱり分からないわ!」
と、スクルドは眉間に皺をよせる。


「言い換えれば恋愛って言うのは、他の人に思いが向かう、つまり
情熱って感情の流出なのよ。そのエナジーはまことに稀有で
奇跡そのものなのだけど、その当事者の日常からの視点では、
ただオカシクなっている、愚かな行為だと認定しちゃうのね」
ウルドはうんうん、と頷く。


「恋愛って、稀有で奇跡…それは分かるような気がするわ」
スクルドはふと、遠い目をする。


「誰かを思う時、それが言葉で表現出来ない混沌なのだとしたら
例えばアンタが仙太郎君の事を『好きだ』と認識しなければ、その
思いは何処へ向かうのかしら?」
ウルドはスクルドを見詰めながら、そして
「その言葉に出来ない思いにあるベクトルをつける、そして気がつく
のよね『ああ、好きなんだ』って」


「な、なんでここで仙太郎君の事が出てくるのよ!」


「それは置いといて、ちょっと聞くけど、アンタ、好きの反対って
何だと思う?」


「好きの反対…嫌いって事?」


「違うわよ。好きの反対は、関心が無いって事」


「ふぅん…で、ウルドはどうなのよ?」


「アタシ?アタシは恋のキューピッドなのだから問題なしよ」


「意味がわかんない」


「それでね、恋愛のベクトルって何処へ向かっているか分かる?」


「それは…その相手でしょ?」


「それもあるけど、いつだって恋愛ってのは未来へ向かうものなの」


「未来へ…」


「そうよ」


そこでスクルドはしたり顔になる。
「そうか…ふふっ、アタシって、そうか…えへへっ」


「何をニヤニヤしているのよ、気持ち悪いわねぇ」



秋の気配が森里家の庭に静かに腰を降ろして、周囲の空気を
少し精妙にしている。紅葉した木々の葉がはらりと落ちて、
紅い絨毯を作るのもそろそろかと思われる頃、豊穣の秋の収穫は
心にも訪れるのだろうか。



恋愛について、秋の考察。


by belldan Goddess Life.