ああっ女神さまっ+

恋ってさ、特に若い頃の恋ってのは、エネルギーの迸りが
互いを惹きつけ合うものなんだよね。


類は友を呼ぶ、とか。


惹かれ合い、惹かれ合うのは、そう言った意味では多分、
恋心とかではなく、まるで磁石が引かれ合うような、そんな感じ。


とか。


俺が君に出会った、あの頃ってのは、きっとそんな感じ
なのかな?と、思い起こしていると、窓の外、風がひゅるりと鳴く。
起き上がり、視線を窓に向けたのだが、何も見えなかった。
エネルギー、エナジー、要するに力が漲っている時と、そうでない
時ってあるよな、なんて。


苦笑してみる。


思いは何処から来るんだろうと考えてみる。
それは心の奥底から来るもの?それは思い付きで浮かび上がるもの?
そんな二者選択ってあるのかな?とか。


「あなた!早く起きてくださいっ!もう出社時間なのにっ!」
下の台所から声が響く。
もちろんすでに起きてはいるのだけど、何だか今朝は考え事に
邁進したいって感じなのかな?そんなお年頃?とか。
「うん、分かっている!」
本当はもうちょっとだけー!とか甘えたいんだけど、さ。


ベットから体を起こし、身支度を済ませ、部屋を出て階段を降りて
台所へと向かう俺の名前は、川西仙太郎。
あれから、幾年の歳月が流れて、現在、ここに至る訳だが、
それにしても、今更ながらまさかな、とも思う。


まさかこの俺が、あの人のように、女神さまっと結ばれて
この地上界で、こうしてごく普通に暮らしているなんて。


「おはよースクルド
「おはようじゃないわよっ!もぅ!」
食卓には彼女の力作とも言える朝食が並んでいる。
スクルドは腰に手を当てて、少しご立腹気味の様子だが、これは
いつもの事なので気にしない、と言うか慣れた。
うん、でもこれが俺たちの日常であるし、俺が大好きなものなのだ。


食卓に付き、朝食を食べているとスクルドが少し躊躇しながらも
俺に尋ねてくる。
「ねぇ、あのさ…明日から…」
「うん、この間聞いたから」
「で、あなたは、どうなの?」
「俺?そうだなぁ…君に一任するよ」
「…それって、賛成じゃないって事?」
「そうじゃないけど…大丈夫なのかな、と」
「誰がよっ?」
「…君が、さ」
「誰にモノ言っているのよっ!このアタシを誰だと!」
「ああ、ゴメン…分かっているさ」
「だったら!」
「そうだよな、俺も賛成かな」
「…そう、だったら最初からそう言えばいいのよっ」
「そうだね、その通りだ」


こんなケンカ腰の朝の会話は日常茶飯事なのだけど、マジでケンカを
している訳じゃない事を言って置きたい。


そう、俺たちは愛し合っている。


玄関先、それはいつもの挨拶なんだけど、実は非常に恥ずかしい。
俺は生粋の日本男児だと言うことも合って、北欧流の挨拶っては
どうにも、ね。
「じゃあ、行って来る」
「はい、行ってらっしゃい」
そうして、彼女は瞳を閉じて、顔を俺に突き出すのだ。
しばしの間、そして小さな溜息の後に、俺は彼女に口づけをする。


そう、これは挨拶。そして少し恥ずかしいけれど、彼女の美しい顔に
これが出来るのは世界中探しても、俺しかいないと断言したい。


ドアを開けると冬に相応しい朝の冷気のお出迎えだ。
家の温度とは明らかに違う温度差に身を引き締めて、今日も頑張るぞ
と思いを新たにするのだった。



ああっ女神さまっ+(プラス)


序章「あなたの願い、叶いました?」


by belldan Goddess Life.


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次回予告。


第一話「波乱の女神降臨?」