ああっ女神さまっ+

三月ウサギは気紛れなのだっ!


「ちょっと、そこ!遊んでないでちゃんとやりなさい!」
「あ、遊んでなんかないですよー!」
「手がお留守です!」
「はぁ〜い…」
エプロンドレスが初々しい美少女と、麗しい褐色の肌の美女が
他力本願寺の境内で、何かと格闘中であった。
傍目にはどう映るのであろうか、華麗なダンスステップ?
それともゲームセンターよろしく、もぐらタタキの真っ最中?
そんな不可思議な、それでいて愛らしい姿があった。


白衣の美女は腕組みをしてエプロンドレスの美少女にテキパキ
と指示を出していた。
「ウ、ウルドおば…姉さん、本当にこんな事していたの?」
「してたわよ、これも掃除の一環なんだから」
「そ、そうなんだ…?」
人智を超えた存在…ユグドラシルのシステムから地上界へと
送られる情報から発生されると言われるシステムエラー、
いわゆるバクは現在でも時折見られる。
女神達が去った現在、他力本願寺にはバグは皆無だったのだが、
再び近隣に女神たちが降臨して来たので、
後処理をしなくてはならなかったと言うのが、実情であった。
もうひとつ理由があった。
時々地上界を巡回するワルキューレ御一行は、
寺の本堂で休憩しているらしい。
その際の残留思念とも言うべきものに
バグが発生するかもしれない。


人の目には見えないバクは、まるでウサギのように軽快で、
周囲をピョンピョンと跳ねているので、一つずつ消去するのは、
とても疲れる作業であった。
だが現在は違う。拡散するバグのひとつにウイルスを打ち込んで、
すべてのバクと並列化させてから消去するので楽になったのだ。


とは言え、
初めての作業にエプロンドレスの美少女はヘトヘトになる。


「ところで、どうしてエプロンドレス?」
ウルドはマリアベルに訊ねた。
「実は〜お掃除って聞いたんでメイドさんかなぁ?って」
やけに嬉しそうなマリアベルだった。


*** *** ***


ひとしきり作業を終えたふたりは、最後の仕上げとして、
周囲の浄化の為の唱を唱和する。
ウルドは魔方陣を展開させた。
「うわ〜すげー早い!」
「当たり前よっ!アタシを誰だと…」
「ですよねー!」
「それより、ちゃんと唱、覚えて来た?」
「無論ですよー!間違えたりしませんからー!」
「当たり前です。ここは天上界じゃありませんからね!」
「はーい」


ふたりの唱が展開される。
アルトとソプラノのハーモニーは、それだけで崇高な音楽となり、
聴く者を陶酔させてしまうだろう。
そこに法術が展開されていて、魔方陣を基点に、周囲が浄化されて
行くのであった。


「はい、お疲れさん」
「お疲れ様でしたー…あれ?」
「どうしたの?」
「あの…正門でこっちを見ている男の子って…」



まさか…見られた?ウソ!わたしの事…



マリアベルに戦慄が走るのであった。



*** *** ***



あれって…もしかしたらマリアベルさん…だよな?
と言うか、どうしてお寺でメイドさんの格好?
と言うか、何で俺より先回りして来てんの?




ああっ女神さまっ+(プラス)


by belldan Goddess Life.


*** *** ***

第6話「君って、女神さまっ?」