ああっ女神さまっ+6

静謐な部屋には静かな電子音がBGMのように流れ
時折壁に掛けてある時計の時報がアクセントになる。


ちょうど時刻は昼時を告げた。


「螢一さんっ そろそろお昼ですっ」
その空間にあるのは、スタイルの良い事務机と椅子と
そして麗しい女神さまっの微笑みだ。
「…うん、ちょっと休憩、だね」
白い神衣を着ている男性は、女神さまっの微笑みに
無垢な笑顔を返した。


その部屋、真っ白な空間には、およそここが天上界だと
感じられないものがあった。
まるでこわれ物を隠すような、そっと包む込む空間は
それその物が違和感を感じずには居れなかったが。


ふわりと空間から出て来た華奢なティーカップには
馥郁たる香りの紅茶が淹れてあった。
後からティーポット、シュガーポット、そして
ミルクポットが登場して、午後のティータイムの始まり
を告げるのだ。


場所を移動して二人、差し向かいでテーブルに座る。
瀟洒な猫足のテーブルと椅子は、そのまま伝統ある古き良き
英吉利へと訪れた感もある。
部屋は、そのまま19世紀頃のロンドンの部屋の様相を呈して
いた。


神衣を着ていた男性の衣装が、黒の燕尾服に変わり、
それに合わせて女神さまっの衣装もロングドレスへと変貌した。


「うん、美味しい」
「よかったっ!」
女神さまっは紅茶のお代わりを勧め、ティーポットから紅茶を
彼のカップへ注ぐと、今度はベルガモットの香りが鼻腔を擽る。
「次はアールグレイかい?」
「ええ、そうですっ」


思いが実現する世界って、あるんだな、と思った。
ここに来て数日は過ぎただろうか、いったい地上では何日に
なるんだろうか。
男性の思考は地上界に思いを馳せていた。


「気になります?」
「うん…あの娘、ちゃんとやっているだろうか?」
「大丈夫ですっ だって私たちの娘ですものっ」
「…そうだね」



その男性…森里螢一は天上界に赴いていた。
もちろん死んだわけではない。
天上界の女神と恋をし、愛し合い、結婚まで漕ぎ着けたのは
まさに僥倖なのだが、その後の事務手続き等の故、こちらまで
来る事に相成ったのである。
彼自身の肉体が直接行く事は出来ないので、思念体と言うか、
幽体離脱をして来ているのである。



「でも、ちょっと気になりますか?」
「うん…そうだね」
「見てみます?」
「できるの?」
「もちろん!」


そう言うと壁の一部が窓になり、そこから地上界が望遠できた。
「えっと…猫実は、と」
スクロールして、ワイドにすると猫実の街が一望出来る。
「…と、ああ、姉さんがいるわ」
女神さまっはある場所をクローズアップした。


他力本願寺がある場所であった。




ああっ女神さまっ+(プラス)6


*** *** ***


すでに2ヶ月…大変長らく更新が途切れてしまいました。
原作では色々確信に迫る物語が展開されている模様ですね。
さらに現実では女神さまっのサイトが閉館など、淋しいものが
あります。
さらにさらに現実日本はヤバイのは言うまでもありません。

ですが、その終焉を迎えるまでは微力ですが、拙い物語の断片を
書き綴れたら幸いかと存じます。