ある日の千尋さん5

「おう、そうだった!」
「ああ、忘れちゃイカンな」
作業の手を止め、やおらバックから装備一式を
取り出した、田宮と大滝。


あんたたちの容姿はゴツイんだから、お客さんを
怖がらせちゃダメだぞ、と留守番と頼んだ千尋さんは
「可愛い接客が肝心なんだからねっ」と尊い言霊を
残していたのだった。


何事も準備が肝要、万事怠りなく任務を展開させるべく
用意周到なふたりは、いつものように装備している
作業服を取り出すのだった。


「昨今、ゆるキャラブームなのでな」
「おおよ!ぬかりはないぞ!」


いわゆる、着ぐるみ…である。


ゆるキャラは可愛い楽しい、と女性にも人気があり
以前のように面妖な!だとかは言われなくなって
大学院で甲冑とか着込んでも、違和感なく思われている。
まあ、実は大概なんだが、誰にでも慣れは存在する。



「どうだ!この甲冑くんは!」
「おう!すごいぞ大ちゃん!」
どう見ても中世の戦士だが、気にしない。
「オレのもどうだ!すごいだろ!」
「すげーぜ!田ちゃん」
大型ショベルカーの着ぐるみを纏った田宮は
どうだ、と言わんばかりに股間のショベルを起立させる。


これで接客は万全だな、とふたりは握手するのだった。


ともあれ、ゆるキャラじゃなく、限りなくガチなふたりは
作業に戻った。


どう見ても変態だ。


しかもバイクショップ内で、戦艦プラモを製作中だし
常連さんが恐る恐る店内を覗くのだが、怖くて
誰も店に入れない。
宅急便の人も、同じだ。


そのおかげで、ふたりは作業に集中出来るのだった。



「ええ、はい…そうなんです、行き付けのお店に、その
変態…ええ、賊が…はい、場所は…」
いつもご贔屓してもらっているバイク店の中が騒然と
しているのを、これまたご近所の弁当屋の主が気にして
所轄に連絡、それを出張で来ていた中嶋くんが無線で
連絡を受け、ワールウインドに到着した。



「まさか…本当に賊が…?!」
先程、仕事がてら訪問したばかりだと言うのに!
迂闊だった。敵は用意周到だったのだ。
しかし所轄の県警より先に到着出来たのは僥倖だ。
先輩の命はオレが守る!


賊に気取られるのを警戒し、バイクのエンジンを切って
裏手から回る。勝手口をそっと開けるとそこには。


by belldan Goddess Life.


*** *** ***


無駄な文章を省略しているのに駄文なのは如何なものかと。
ウルド姉がいないのにマッチポンプ的展開にしても。
まあ女神さまっ三姉妹を出さずに展開しているのもどうかと。
こうしてマリベル話は遅々としている次第で。