ある日の空ちゃん

「ふぅ…あたしだってメガネ属性なんだけどなぁ」
長谷川空の溜息が部室の空気に溶けていく。
そう彼女は猫実工大自動車部に咲く一輪の花…って言うか
紅一点って言うか、現部長って言うか、何て言うか。
そんな彼女なのだが、恋する乙女なのは当然で、しかも
まわりは男だらけで、よりどりみどりな環境下にいるのだが
いかんせん、何も進展しないのであった。


前部長である森里先輩の彼女、ベルダンディー先輩の存在は
それはもう高嶺の花であったし、このむさ苦しい部室を
バラ色に染め上げていたのは言うまでも無い。
ここは天国か?と言わんばかりのお目出度い環境を構築し
それはそれは幸福な時間があったのだった。


だった。


それに藤見千尋さんの存在もある。彼女の功績を鑑みると
そこには女性ならでは繊細かつ豪快な活動があったと
言えるだろう。


千尋さんにベルダンディー先輩…そしてあたし…」
三人目の女性部員としては現状を打開しなくては、と
思う。思うのだが、何をどうして良いのかわからない。
そうこうしている内に、電気ポットがコトコトと音を
立てていた。
「あ、沸いた」
棚から紅茶の缶を取り出して、淹れる用意をする。
まずはティポットの中に沸きたてのお湯を注ぎ、程よく
温まったのを見て、その湯をティーカップに移した。
空になったポットにティースプーンで二杯、紅茶の葉を
入れ、丁寧にお湯を注ぐ。その際にカップの湯を捨て、
砂時計を逆さにした。


2分後。


ポットの蓋を開け、中の茶葉の開き具合を確認し、再度
蓋を閉じる。


2分58秒経過。


蓋を開け、スプーンで優しく中の茶葉をかき混ぜて
終了。うん、我ながら上出来だ。
カップに注ぐ紅茶の香りは、ベルダンディー先輩には
及ばないものの、優しい香りを纏っている。
「う〜ん、美味しい〜」


しかしヒマだ。


アレをやるか。


「ねえ○○さんっ紅茶が入りましたよっ」(声色高めで)
「ああ、ありがとう○○」(声色低めで)


空しい…マジで。



メガネで委員長とか、メガネでメイドさんとか
非常にモテモテなんだと聞くのだが、やはりあれか、
メガネで部長って設定はダメなのか?


設定に難あり、なのか?


「否、断じて否であるっ!」
とほほのほ、こんなあたしでも好きって言ってくれる
誰か、居ないかなぁ。


ガチャリと、その時部室のドアが…


by belldan Goddess Life.


*** *** ***


なんかもう…色々混乱しちゃってマス。
化物語の羽川さんの辛い恋物語とか、あるいは
英国のメイドでエマさんの恋愛成就とか思うと、
空ちゃんにも何かがあって然るべきだと。


思ったり思わなかったりして。