森里家の日常7

「ありゃ…」


随分長い間放ったらかしにしておいてたギターの弦が
良い塩梅にウエザリングされていた。
つまり…錆びているって事だけど、でも俺には秘策が
あるんだ。
そんな訳で台所へと向かっている。


まずは鍋に水を入れて、コンロにのせて火をつける。
ほどよく沸騰した所で、ギターから取り外した減を
手際よく丸めて鍋の中へと。
沸々と気泡を立て湯気を上へと遊ばせていると、何だか
料理をしている気分になる。
そう言えば彼女が来てから俺って何も料理してないよな。


そうは言っても大学の男子寮時代も、店屋物とかで
済ます事が多かったし、金欠な時はもちろんカップ麺が
あるじゃないか、と言った食生活だった。


そう考えれば、今の生活って最高に幸福なんだよなぁ。


「なにニヤニヤしているのよ、気持ち悪い」
「あーなんだ、ウルドかー」
「何しているの?」
「何していると思う?」
「…まさか、自殺?」
「それを言うなら、自炊とか、だろ!」
「そうとも言うわね」


ウルドはコトコト音を立てている鍋が気になったのか
覗き込んで、かわいそうな人を見る目で俺を見た。


「な、なんだよ」
「アンタ…いくらなんだってこんなものを」
「べ、別にいいだろ!」
「これは大問題よねっ!ちょっとベルダンディー
知っているのかしら!」
ベルダンディーは関係ないだろ!」


ベルダンディーベルダンディー!」
ウルドは大声でしかも法術を行使して彼女を呼んだ。
呼んだと言うより、叫んだ、と言うべきか。


「姉さん、どうかしました?」
まるで風のように台所へと現れたベルダンディー
不思議そうにウルドを螢一を交互に見る。
「アンタ、ちゃんと螢一にご飯食べさせているの?」
「ええ、今朝もちゃんと…三杯も」
通常の三倍も!?」
「ええ、それはもう『おいしいおいしい』って言って
くださって!」
「そう、なの?」
だったらこれを見なさいよ、とウルドはベルダンディー
に鍋を見れば、と言った。


「まぁ!これは…」
「でしょ?」
「新種の麺かしら?」


その始終をどう説明しようかと傍観していた螢一だったが
いつもどおりの斜め上への展開に安堵と不安が限界点に
達したので、事の次第を二人へ説明する。
もちろん、この作業も日常茶飯事なのは言うまでもない。


「ギターの弦、ですか」
「そうだよ」
「それなら最初に言ってくれないと!」
ウルドはつまらなそうに言う。
「面白くなってきそうだったのに」
何が?と聞きたい所だが、聞かない事にするのが森里家の
慣わしだ。


錆びた弦を煮沸すると、一回だけだが弦が蘇るのである。
その事を説明すると
「わぁ〜すごいですねっ」とベルダンディー
「何度でも蘇らせる方法とかないの?」とウルド


ふたりの女神さまっの意見は様々だが、これが森里家の
日常なのである。


おわり。



「後でギター、聞かせてくださいねっ」
「もちろんだよ、ベルダンディー
とは言ったものの、最近奏でてないので不安であるが。



つづく。


by belldan Goddess Life.

*** *** ***


こんな感じで、こんな感じかな?