森里家の日常11

「もっと女子力を!」
スクルドはそう強く思うのだった。女神だけど。



そんな感じの日常でも、ささやかなイベントは
ある訳で、今日は庭に面した縁側には笹が一本立てて
ある。
そう七夕の支度だ。
縁側には冷やした麦茶と切り揃えたスイカコントラスト
が季節を彩っていて、その冷えた麦茶の入ったグラスを
手にして、螢一は空を見上げた。
「夜は…晴れたら良いな」


「願い事…もう書いたのですか?」
「え?ああ、短冊だよね」
「ええ、可愛く出来たので」
そう言って色取り取りの色紙で作った短冊を見せて
ベルダンディーは微笑んだ。
「そう言えば、ウルド達は?」
「姉さん達は…その、まだなんですが…」
「暗くなるまでに用意させないと、ね」
「ええ、そうですねっ」


思えば願い事を叶える立場にある女神さまっ達から
願い事を短冊に書けって事が実に奇妙なんだけど、
これはイベントだしね、と螢一は考える。


時折風が通り過ぎるのか、縁側に吊ってある風鈴が
チリンと涼しげな音を立てていた。


その頃スクルドは、台所で奮闘中だった。
とは言うものの、洗い物をするだけなのだが。
「どうしてこうなるの?」
欠けた皿や茶碗を目にして、涙目になっていた。


もしかして、武装が完璧ではなかった?
そうだエプロン!エプロンよ!
そう言えば、正装は裸にエプロンだと誰かが言っていた
ような気がするわ!
誰だったか…


でもそれはイヤ!
全裸なんてヤ!
見ても良いのは仙…ヤダー!



そしてウルドは自室で、何やら研究に余念がない。
「うふふ…」
恋のキューピッドとしては、七夕の恋の行方は
気になるわよねっ。
織ちゃんも彦くんも、あたしの手にかかれば一網打尽
ドンッと来いだわ。恋だけに。



そんな感じの森里家の日常。


by belldan Goddess Life.


*** *** ***


明日は七夕。